ビットコインを生むマイニングの具体的な仕組み
マイニングはビットコインを生み出し、ブロックチェーンを守っています。このレッスンでは、マイニングの具体的な仕組みを説明します。
採掘(マイニング)とはコンピュータによる計算の競争
採掘(マイニング)は、新規発行されるビットコインを採掘者(マイナー)に与えるしくみで、常々行われているビットコインの取引が適正なものかどうかを判断して承認する作業です。
この作業を行わないと、世界中で行われている取引が枝分かれして、「どれが正しい取引なのか」がわからなくなってしまいます。従来のシステムでは、取引が行われるシステムで不正やエラーがないか、チェックする管理者を置くのが一般的です。
しかしビットコインの場合は管理者が存在しないため、不正を行いづらくするしくみが必要になります。それが「ブルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work)」と呼ばれるしくみです。たとえば、誰かが勝手に「この取引を承認する」と言っても、ビットコインのシステムでは許可されません。
このプルーフ・オブ・ワークに基づいてのみ合意がなされます。プルーフ・オブ・ワークは、直訳すると「作業の証明」です。コンピュータに膨大な計算(作業)を行わせて、一種の「くじ引き」をしている状態です。
具体的には、コンピュータに「ある条件を満たした数字」を早く見つける競争を行わせ、その条件を満たした数字にたどり着いたコンピュータにビットコインの報酬が支払われます。このとき、そのコンピュータで新しい取引ブロックが生成され、その情報が世界中のネットワークに共有されます。
マイナーはネットワークの守護者
マイナーはビットコインのネットワークですべての取引の認証作業を行っています。ビットコインの認証作業は、コンピューターの計算力を使って行われます。マイナーはこの計算力を上げることにより、ブロックを見つけて報酬を受け取る確率を高めています。
マイナーは、ユーザーが行った取引に対して認証作業を行い、認証が完了した取引はネットワークに承認されます。このため、ビットコインのネットワークはマイナーなしでは正常に機能しません。
マイナーは取引を監視し、ネットワークのセキュリティを保証します。取引は、送信者からネットワークに配信され、マイナーがこの取引に不備がないかを確認します。マイナーが認証できなかったものは不正な取引となり、台帳に残りません。
スーパーコンピューターを超える計算力
ビットコインの認証作業は、コンピューターの計算量に左右されると説明しましたが、2009年の誕生以来、認証作業に使用される計算量は増え続けています。マイニングは当初、マイナーの自宅のパソコンを使ったものがほとんどでした。
しかし、ビットコインの価格上昇と共に、成功するとビットコインが得られるマイニングにも注目されるようになりました。マイナーが競争したことで総計算量も大幅に伸び、2017年現在、私たちが普段日常的に使っているパソコンでマイニングすることは事実上不可能になりました。
現在はマイニング専用機器ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が開発され、マイニング用コンピューターの主流となっています。これにより、計算舅は爆発的に上昇し、マイニングに限っていえばスーパーコンピューターをしのぐほどに成長しています。
例えば、日本のスーパーコンピューター「京」は世界で8番目の計算量を誇るコンピューターですが、マイニングの用途に限ると、専用のコンピューターには勝てません。さらに、世界の1位から10位のスーパーコンピューターを用いてもマイナー全体の計算量の半分にも満たないと計算されています。
マイニングは誰でも参加できる
ビットコインの特徴の1つは、誰でもネットワークに参加できることです。インターネットさえあればすべての人がどこからでも、ビットコインのネットワークにアクセスできます。マイニングも同様に、ユーザーが自由に参加できます。
マイニングには電気代や専用設備などのコストがかかるため、電気代の安い中国、ベネズエラや、寒冷であるためマイニング用のマシンの冷却効率がいいアイスランド、または自然エネルギー発電が活発な北欧諸国などが、マイニングに適している地域といわれています。
ちなみに日本では、電気代が高いため、国内でビットコインのマイニングを行っている人はあまりいません。マイニングの参加は自由である一方、収益が上がらないマイナーは自然に離脱していきます。
ヒツトコインが登場した初期の時期は、多くの人は趣味程度にマイニングを行っていたといわれています。しかし現在は、マイニングの競争が激化し、マイニングファームと呼ばれる専門の企業が産業を形成しています。
マイニングファームの影響力
マイニングファームが巨大化するのと同時に、その経営者もビットコインのネットワークに対して大きな影響力を持つようになりました。中国には世界最大級のマイニングファームがあり、24時間365日コンピューターを稼動させてマイニングを行っています。
このマイニングファームを運営するBitmainは、大量のマイニング機器を抱え、膨大な計算量を誇ります。大規模なマイナーは、ビットコインネットワークに大きな影響力を持ちます。
2017年B月にビットコインが分裂するきっかけを作ったのは、Bitmain最高経営責任者(CEO)のジハン・ウー氏でした。一方、電気代が比較的安いアメリカ・ワシントン州を拠点とするMGTCapital lnvestmentが運営するマイニングファームも有名です。
同マイニングファームの運営責任者ジョン・マカフィー氏は、初期の頃からビットコインにかかわっており、ジハン・ウー氏とも親交があります。この2人は、ビットコインのマイニング産業におけるキーパーソンといえます。
●主なマイニングファーム
マイニングファーム | 拠点 |
Bitmain | 中国・アメリカ・アイスランド |
BitFury | アイスランド |
Genesis Mining | アイスランド |
MGT Capital lnvestments | アメリカ |
1計算量はハッシュレートで表される
マイニング計算量はH/sの単位で表されます。HはHash(ハシシュ)の略で、マイニングの計算量を指しています。ハッシュ関数を使った演算を1回行うと、1Hashというようにカウントされます。sはSecond(秒)の略称です。1TH/sならば、毎秒1テラ回の計算を行っているということになります。この速度をハッシュレートといいます。
2どんな人がマイナーをやっているの?
仮想通貨では、ほとんどの場合誰でもマイナーになることができますが、今では趣味でやっている人よりも、事業化してマイニングを行う個人や法人が多いようです。例えば中国のBItmainはマイニング機器の販売とマイニングを目的に設立された会社で、ビットコイン全体のマイニング量の17.6%を掘り当てています。Bitmainは投資家とパートナーシップを結びマイニング設備の運用代行も請け負っています。
3ビットコインのネットワークの価値とは
世界1位のスーパーコンピューターは中国の「神威」とされています・このスーパーコンピューターは300億円以上の開発費用がかけられています。しかし、このレベルのスーパーコンピューターを使っても、ビットコインの取引を改ざんすることはできないのです。
4ハッシュレートは右肩上がりに増加中
ビットコインの計算量を表すハッシュレートは2009年から2014年までは、コンスタントに増加していましたが、10,000TH/s程度でした。その後、ビットコインが注目を集めた2017年現在は、2014年の約800倍の8,000,000TH/sとなっています。
5マイニングのコスト
ビットコイン全体のハッシュレートは1100万TH/s(テラハッシュ毎秒)です。最も使われているマイニングASIC「AntminerS9」の計算量が14TH/sなので、約78万台のAntminerS9が稼働している計算になります。AntminerS9は1日に最大400円のコストがかかるので、ビットコインを維持するのに1日で最大3.5億円かかることになります。ちなみに1日のビットコイン発行額は円に換算すると12億円(2017年11月現在)ほどです。
6マイナーはコストの効率化が求められている
マイナーの収益を上げるためには、高性能でさらに電気消費量が少ないコンピューターが必要です。また電気料金が安い地域でマイニングを行うことが鍵になります。マイニングの参加は自由ですが、収益を確保するためのハードルは高くなっています。
7マイニングファームの運営にもリスクがある
ビットコインのマイニングファームは、多くのマイニング機器を抱え、大規模な設備投資を行っています。ビットコインの価格が上昇している時期は、利益も大幅に上昇します。一方、ビットコインの価格が急下落した場合、多くの借金を抱える可能性もあります。
マイナーはネットワークの価値を高める
ビットコインのネットワークにはマイナーが必要不可欠です。しかしマイナーはボランティアではなく、収益を得る企業や団体です。マイニングに収益性がなくなれば、マイナーはネットワークを去ります。そのため、インセンテイブとして長期的な収益性をマイナーに与える必要があります。長期的なマイナーの存在は、ネットワークを安定させ、さらなるビットコインの価値向上に寄与します。