ブロックチェーンの仕様を強制的に変更する「ハードフォーク」
過去にもブロックチェーンの仕様が変更されたことがありますが、「管理者不在」なのに変更されたことで、その後に大きな混乱を招きました。
ブロックチェーン自体の仕様を変更することはできるの?
様々な注目を集めるビットコインですが、ビットコインにも問題があります。ビットコインの仕様では、1ブロック(約10分間)の容量上限が1メガバイト(数千件程度)と決められているため、今後ビットコインの取引拡大によって処理能力の限界を超えると言われています。
そこでブロックチェーン自体抜本的仕様変更を行おうとする動きがありますが、そもそも管理者がいないブロックチェーンの抜本的仕様変更など可能なのでしょうか。これまでにブロックチェーンの仕様を変更した事例としてイーサリアムでの例があります。
この通貨を利用した「The DAO(ザ・ダオ)」というプロジェクトが多額の資金を集めましたが、コードの脆弱性を攻撃され、集めた資金の約3分の1が流出する前代未聞の大事件が起きました。これに対して、開発チームは「ハードフォーク」により問題の解決を図りました。
ハードフォークとは、もとのブロックから新しい別のブロックを強制的に枝分かれさせ(フォーク)、ブロックチェーンの仕様を変更することです。これによって従来のブロックチェーンとの互換性がなくなり、新しいブロックを選択した参加者は強制的に仕様変更が必要になります。
参加者の多くは仕様変更された新しいブロックを選択しましたが、中にはもとのブロック(イーサリアムクラシック)を選択するユーザーもいるため、現在も混乱が続いています。ブロックチェーン自体の仕様変更は可能ですが、この事例からも決して一筋縄ではいかないということがわかります。
ハードフォークが現実化して作られた「ビットコインキャッシュ」
イーサリアムで現実化したハードフォークですが、ビットコインにおいてもハードフォークが現実化し「ビットコインキャッシュ」が作られました。これまでの過程でビットコインのブロックのサイズは1MBと上限が決まっており、送金の遅延などが発生することがありました。
この容量についての課題を解決するためにSegWitなどの様々な策が考えられましたが、合意形成がうまくいかずに問題解決には至っていませんでした。しかしここで、ハードフォークを強制的に起こそうとする動きが出ました。
一部のマイナーが主導でビットコイン・アンリミテッド(Bitcoin Unlimited)という、ブロックサイズの問題を解決できるビットコインを作るという動きがあり、そこにブロック生成を行うパワー(ハッシュパワー)が強いマイナーなどが次々に賛同し、ハードフォークが現実化したという経緯です。
ハードフォークが現実化すると、過去から長く続いていたブロックチェーンがある時点を境に、2つに枝分かれします。具体的には、ビットコイン(ビットコイン・コア)と新たに枝分かれしたビットコインキャッシュ(BCH)に分かれることとなりました。
今までビットコインを持っていた人は、今までと同量分のビットコインキャッシュ(BCH)が自動で与えられることとなりました。顕在化が深刻になった2017年3月は、この問題に業界は大混乱し、ビットコイン価格が大きく下落しました。さらにハードフォークしたときに備え、取引所が共同で声明を出す異例の事態となりました。